ポリファーマシー対策と個別最適化による薬物療法の向上

ポリファーマシー対策と個別最適化による薬物療法の向上

橋場元 氏 写真

橋場 元
公益社団法人 日本薬剤師会、常務理事

近年、薬局薬剤師には対人業務の充実が求められています。そして、オンライン資格確認、電子処方箋などの情報基盤や、ウェアラブル電子端末の普及などにより、患者個々の生体データを入手しやすくなっていること、および分子遺伝学的解析など検査技術の進歩もあり、薬局薬剤師にとって、個別最適化された薬物療法を提供できる環境が整備されてきています。薬局薬剤師はこれらの患者の生体情報、患者から聞き取った情報、医薬品の情報などを総合的に分析・評価し、さらに、患者の心理・心情に寄り添いながら、薬局・薬剤師の基本業務である、患者への安全で効果的な薬物療法の提供を実践する必要があります。

医療安全の向上へ 〜 ポリファーマシー対策と薬物療法の個別最適化 ~

薬物療法の個別最適化の一つの課題として、ポリファーマシーに関連するリスクがあり、薬局薬剤師も積極的に取り組まなくてはならない業務となっています。

このようなリスクを管理するために、重篤副作用疾患マニュアルとリスク管理計画(Risk Management Plan; RMP)が活用されています。重篤副作用疾患マニュアルは、平成17年から、RMPは平成26年から施行されています。

これらのリスクを防止するツールの精度を高めるためには、多くの情報を収集・解析し、患者の特性や状況を評価する必要があります。したがって、薬局薬剤師は副作用等報告制度などを通じて情報提供することが重要であり、患者の服薬状況や薬物治療履歴、個別の生活状況に関する情報など薬局薬剤師が知り得た情報を共有し、ビッグデータ化することは、薬物療法の個別最適化が推進されることにつながります。そのためには、薬剤服用歴の記録を簡便にデータ提供できるようにするなどの工夫も求められます。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施した、令和4年度「医療機関等における医薬品安全性情報の入手・伝達・活用状況等に関する調査」の結果では、重篤副作用疾患マニュアルやRMPなどの医薬品の安全性を高めるためのツールに対する薬局薬剤師の活用実態が明らかにされました。

厚生労働省が設置している、「高齢者医薬品適正使用検討会」においては、ポリファーマシー対策として、「高齢者医薬品適正使用の指針」や、「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」等が公表されています。令和4年度からは地域におけるポリファーマシー対策について検討されており、薬局薬剤師が地域におけるポリファーマシー対策の取り組みについての事例が示されています。

薬局は、患者の薬物療法を支える重要な拠点です。薬剤師は、ポリファーマシー対策と薬物療法の個別最適化を行うことで、患者の安全性と有効性を高め、医療安全を向上させることができます。 公表されている情報を中心に、現状を知った上で、より安全で効果的な薬物療法を提供できるように、薬局薬剤師が取り組まなければならないことを皆さんと学んでいきたいと思います。

 セミナー 7月13日(木) 開催

コラム筆者である橋場先生より、医療安全を向上させる「ポリファーマシー対策と薬物療法の個別最適化」についてお話いただきます。

筆者

橋場元 氏 写真

公益社団法人 日本薬剤師会
常務理事

橋場 元

昭和42年 富山県生まれ。平成3年3月 昭和大学薬学部を卒業後、同大学院薬学前期課程修了。杏林製薬株式会社にて臨床開発職を経て、株式会社アモールで薬局業務に従事。その他、日本薬剤師会常務理事、富山県薬剤師会理事、中新川薬剤師会会⾧、日本保険薬局協会理事の職に従事している。

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公益社団法人 日本薬剤師会
常務理事

橋場 元

昭和42年 富山県生まれ。平成3年3月 昭和大学薬学部を卒業後、同大学院薬学前期課程修了。杏林製薬株式会社にて臨床開発職を経て、株式会社アモールで薬局業務に従事。その他、日本薬剤師会常務理事、富山県薬剤師会理事、中新川薬剤師会会⾧、日本保険薬局協会理事の職に従事している。

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