薬剤師コラム Vol.11
あなたは薬局で薬剤師であることを伝える?

 第2回目の薬剤師コラム「あなたは病院で職業が薬剤師であることを伝える?」は思った以上に反響がありました。服薬指導の際、患者の職業を知っていることで、より服薬指導が充実するケースは多々あると思います。薬剤師同士の場合、事前に薬剤師だと知らせておくと服薬指導はスムーズに流れるのか、知っていることでデメリットが生じるのか、気になるところです。

薬剤師であることを伝えているのでしょうか

 職業をあえて隠す薬剤師はかなりいらっしゃると思っています。私も服薬指導をしていて、薬剤師と名乗られたケースは数回でした。そんな私も薬剤師であることは伝えません。

 私の理由は、単純に他の薬局では薬剤師がどのような服薬指導をしているのだろうか?そして何か参考になることが発見できたときは、自社薬局内でも反映させていました。下記はその一例とともに、私が考える今回のテーマについてお話をすすめたいと思います。

薬剤師の方の対応

 私事ですが、服用できない薬が非常に多いのです。初めて服用する薬がある場合は、必ず主治医と一緒に確認し、処方箋を書いてもらいます。

 さてそんな私が初めての薬局へ処方箋を出した場合、又は初めて服薬する薬が処方されたときは、薬が出てくるまで時間がかかります。私は薬局ですぐに薬が出るよりも、少し席に座り落ち着きたいタイプですので、少々の待ち時間は気になりません。

 待合室から調剤室を見ると薬剤師の方がひとつひとつ丁寧に添付文書で確認している姿が見えます。本当に嬉しいことです。そして服薬指導時に「安心して服用してください」とお話ししてくださると「さすが薬剤師!そうだよね、薬剤師は患者へお薬を渡す最後の砦なのだから」と。私の副作用歴を薬歴で確認するとかなり緊張して投薬している薬剤師の方は多くいらっしゃいます。私が反対の立場だったら、同じくドキドキしていることでしょう。そんな時は、「医師に服用許可をもらっていますよ」とお伝えすることにしています。

 一方で服用できない薬を伝えていたにもかかわらず、処方通りにそのまま渡してきた薬剤師の方もいらっしゃいました。原因は薬歴に私が伝えたことを記載していなかったからです。薬歴はすぐに記載する、すぐに記載できなければメモに取る、転記ミスはしない、患者のアレルギー歴・副作用歴等の更新を忘れないことが大切だとわかる事例でした(個別指導でもよく問われる項目です)。

 そして薬剤師を悩ませる処方箋といえば、処方意図のわからないケースです。私も薬剤師の立場から何度も経験しました。私が患者の立場となり、薬局で服薬指導を受けている時に、「〇〇〇でお薬が出ているのですか」と質問されたことがあります。処方箋の受診科目を見ていただければ、到底考えにくい疾患でした。「私、そんなひどい病気じゃない!」と少し悲しくなるものです。

 その薬剤師の方も処方箋に記載されている薬が間違っていないのか、確かめようと必死になっていたのはわかりましたが、患者から情報を引き出すための話法にも少し気を使うとスムーズな関係になれたのではと思いました。ただ、私が薬剤師であると知っていれば、もっと違った対応だったと思います。

 一方、ホスピタリティがとてもよい薬局もありました。お盆前に電話がかかり、「次回病院の受診が薬局のお盆休みと重なりそうです。受診予定やお薬の在庫はありますか」とアナウンスされたときは、感動しました。ここの薬局をいつまでも利用しようと思いました(通常は休み前に残置薬を取りに来てくださいが多いと思います)。当然、レセコンの来局予定管理から検索したことは想像できましたが。

 やはりきめ細かい対応や感動体験が薬剤師と患者の距離を縮めていくことがよくわかります。関係が近くなれば、患者にいろんなことを聞くことができるようになります。すなわち過誤防止にもなるだけでなく、不要なお薬を減らすこともできると思います。

立場が違えば

 私が薬剤師と名乗らないことで、薬剤師に服用チェックをしてもらえることができ、より安全性が高まります。更にホスピタリティも充実すると思いました。逆に名乗ってしまうと薬剤師だから大丈夫だろう、本当の薬局の姿をみることもできなかったように思います。

 やはり一般の患者として薬局を利用することのメリットが多いと考えました!但し、薬局薬剤師の立場としては、薬剤師であることを教えてもらうことの方が突っ込んだ話をできる可能性もありメリットの方が多いのではないでしょうか。

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