薬剤師コラム Vol.8
防衛増税は調剤報酬改定に影響を及ぼすか

 2024年度調剤報酬改定へ向けての議論が始まっていますが、政府は防衛力の抜本的強化に向けて、防衛費増額の財源確保へ動き始めました。政府・与党内でも様々な意見が飛び交っていますが今のところ社会保障費の財源である消費税については「家計を直撃する所得税や消費税の増税は難しい」との意見が強いようです。それでは、防衛増税は調剤報酬改定に影響を及ぼすのでしょうか?(2022年12月16日現在の状況をもとに執筆しています)

2024年度調剤報酬改定で着目すべきポイント

 まず2024年度調剤報酬改定で注目すべきポイントはいくつかありますが、一番気になるのは後発医薬品調剤体制加算の行方と2023年1月から電子処方箋の受付が開始されることにより、薬局・薬剤師のDX化をどのように評価されるのかの2点と考えています。

 後発医薬品調剤体制加算は、2021年6月の閣議決定において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上」とする新たな目標が定められています。この目標数値が上方修正されなければ、後発医薬品調剤体制加算の現状維持は難しくなるかもしれません。仮に後発医薬品調剤体制加算がなくなり、減算という話となれば、その分の予算を何に使うのか、議論する必要性が生じます。

 そこで考えられるのが、薬局業務のICT化に伴う費用負担を軽減するために、調剤報酬で補う方法です。但し、ICT化ができていない薬局を減算するという方法もあり得ます。いずれにしても2024年度調剤報酬改定はマイナスからの議論になることは間違いないと思われます。

防衛費をどのように増額する?

 岸田首相は2023年から5年間の防衛費を43兆円に増額する方針を打ち出しました。2022年度防衛費は約5兆4000億円、2027年度には約11兆円まで膨れ上がります。岸田首相は2027年度以降に必要な年間4兆円の防衛費増加分のうち、1兆円を超える金額を増税でまかなう方針です。税制措置では、法人税・復興特別消費税・たばこ税を充てる方向で進めたものの、12月13日に開かれた自民党税制調査会では復興特別所得税の活用に批判が相次ぎました。

 結局、12月16日になって拙速との批判が出ている防衛費増額に伴う財源の一部については、所得税額の2.1%の復興特別所得税を1%引き下げるとともに、課税期間を延長し、減額分に相当する税率1%の新たな付加税を創設すると方針を説明した。

 また防衛費増加分については歳入だけの調整では足りず、歳出のカットも必要となります。2022年度予算の内訳のうち、一般歳出に占める社会保障費の割合は54%(約36兆2700億円)となっており、2000年度の35%(約16兆7600億円)と比べて急増しています。歳出に占める割合が多い社会保障費が調整されることは間違いないでしょう。他にも建設国債、決算余剰金の活用なども必要となります。

薬局が準備すべきことは

 これまでの話をまとめると、防衛費増額分に関しては何らかの調整が社会保障費に入る可能性があります。近年の調剤報酬改定では、毎回マイナス改定の議論からスタートし、結果プラス改定となっていますが、今回はかなりきびしく診療報酬全体の適正化が行われることが予測されます。

 そのような厳しい状況で、薬局の後発医薬品に対する取り組みがどのように評価されるか。つまり、後発医薬品の目標を90%とした場合、国の社会保障費が実現性も含めて、どの程度抑えられるのか。もし評価がなされなかった場合に後発医薬品調剤体制加算の財源をどこに置き換えるのかを薬局関係者は準備しておく必要があります。ICT化に伴う費用負担は中小薬局に大きくのしかかってきます。実現可能であれば、ICT加算等の新たな枠組みを作る必要があります。

 もし、評価されず、置き換わる場所がなければ、防衛費増額のための財源として使われる可能性も否定できないと思います。改定の度に注意をしなければならないことでありますが、2024年度調剤報酬改定は要注意が必要であることは間違いないでしょう。

次回は「電子処方箋との付き合い方について(予定)」についてお話ができたらと思います。

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