薬剤師コラム Vol.3
個別指導の通知が届いたら【前篇】

 この記事を読まれる方で個別指導を経験された方はどの程度いらっしゃるでしょうか?厚生局から個別指導通知が届いたときは、「一瞬頭の中が真っ白になった」「手が震えた」など様々な思いをされたことでしょう。普段から感じられていることだとは思いますが、「管理薬剤師は孤独な立場だ」と改めて感じてしまう瞬間ではないでしょうか。

個別指導で選ばれやすい薬歴

 個別指導に要求される提出書類は多岐にわたります。都道府県によりばらつきはありますが、一番気になる提出物は薬歴であることは間違いないと思います。まず指定された患者10~15名分の薬歴提出が指示されます。そして前日にはFAXでさらに10~15名分の薬歴の提出を求められます。厚生局に提出する薬歴(電子)は過去の修正履歴がわかり、タイムスタンプの記載があるものとなっています。記載日時がわかってしまうため、服薬指導が終了したら速やかに記載する習慣をつけていないと指導官は薬歴の記載状況に関して、薬局全体でどのような体制・状況になっているのか、詳しく話を聞く必要性が生じてしまいます。指導官が深堀しないといけない材料を渡すことは避けましょう。

 話しは戻りますが、指定された患者の薬歴を出力して簡単に目を通すと「なんだ、簡単な処方内容だ」「これなら余裕で乗り切れそうだ」と考え、ほっとされた方もいれば、逆に「なんでこの処方箋を選ぶかな」と不安になられた方も多いと思います。どちらにせよ何も準備せず、個別指導に臨むととんでもない結末が待っています。厚生局はレセプト内容をかなり詳細にチェックして選別していることがうかがえるからです。

 それではどのような処方箋が選定されるのでしょうか?必ずと言ってもいいものとしてハイリスク加算や乳幼児服薬指導加算を算定しているものです。算定要件を満たす薬歴の内容になっているのか。当然、算定状況も確認されています。 ビタミン剤等の漫然と長期にわたる処方も選ばれやすい内容の一つです。他にも疑義照会は適切に行われているか、疑義照会の内容は正しく記載されているかを確認します。

 そして服薬指導の要点については、同様の内容を繰り返し記載していることもよく指摘されます。服薬指導は、処方箋の受付の都度、患者の服薬状況、服薬期間中の体調変化を確認し、新たに収集した患者の情報を踏まえた上で行うものであり、その都度過去の薬剤服用歴の記録を参照した上で、必要に応じて確認・指導内容を見直す必要があります。また、確認した内容及び行った指導の要点を、具体的に薬剤服用歴の記録に記載することも重要です。 また後発医薬品の使用割合が低い薬局に対して、指導官は患者に手帳を活用することの意義、役割及び利用方法等について十分な説明を行っていないのではと考え、管理薬剤師へ患者にどのような説明をしているのかを聞いてきます。決して指導官に印象を悪くする返答はしないように注意してください。

 最近は、門前のクリニックの医師やその家族、更には職員とその家族の薬歴の提出を求められます。おおよそ提出する薬歴の1~2割が該当していることは驚きを隠せません。

個別指導で大切なこととは

 最も大切なことは管理薬剤師の方が保険等に関係する法的知識および薬学的知識を持ち合わせているかです。指導官も管理薬剤師がこれらの知識に対して勉強不足と判断すれば、個別指導は厳しく進められていくことになります。普段から勉強会に出席するなど最新の知識を入手しておく必要があります。

 今回は簡単にお話しさせていただきましたが、次回どのように個別指導は進められていくのかなど、 詳細にお伝えしたいと思います。

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