保険者から異なる個人番号が登録された事例が公表されました。誤連携や異なった状態で薬剤情報が閲覧される...
セミナーレポートVol.16
運用開始から1年 機能改善とサービス向上で電子処方箋がさらに活用的に!
「電子処方箋」最新状況と今後の動向について
セミナーレポートVol.16
運用開始から1年 機能改善とサービス向上で電子処方箋がさらに活用的に!
「電子処方箋」最新状況と今後の動向について
更新日:2023年12月18日
本レポートでは、2023年12月5日に開催されたオンラインセミナー『「電子処方箋」最新状況と今後の動向について』の講演内容をダイジェストでご紹介いたします。
厚生労働省医薬局総務課 課⾧補佐 課⾧補佐
桒田 佑輔(くわだ ゆうすけ) 氏
本セミナーのポイント
- HPKIカードに加えてマイナンバーカードでも電子署名が可能に!
- 電子処方箋サービス関連導入費用の補助率が引き上げられています!
- 医療情報ネットワークの構築によって患者さんへの情報提供がさらに充実
電子処方箋は令和5年1月26日から全国で運用が始まり、運用を開始している医療機関は11月26日時点で1万施設を超えています。処方・調剤情報が電子処方箋管理サービスに蓄積されており、これから電子処方箋を導入する医療機関も活用が可能です。本セミナーでは、電子処方箋の最新状況と今後の動向について解説いただきました。
マイナンバーカードを活用した電子署名
桒田氏は始めに、電子処方箋の運用開始件数は増加しているが全国には20万件以上の医療機関があるため、 割合としては5%程度にとどまっていると述べ、電子処方箋の導入が進まない要因の1つとして「電子署名対応に手間がかかる」点があると説明した。
電子署名に必要なHPKIカードの発行に費用や時間がかかる、運用の手間、カードの破損への懸念などの声が現場から挙がったため、現在はHPKIカードを発行している場合は、カードレスで署名可能とする対応策をとっている。さらに今後は、マイナンバーカードを活用した電子署名の仕組みを構築して、カードレス署名の推進を進めていくという。
マイナンバーカードを活用した電子署名は、HPKIカードより申請が簡単かつ、発行に時間がかからないといったメリットもある。そして1日1回ログイン時にマイナンバーカードをかざすことで、自動的に電子署名を付与できるシステムを想定しており、手間も減らすことができると説明した。
補助率の見直し
電子処方箋普及のために、令和5年度の電子処方箋管理サービス導入費用を、大型チェーン薬局は1/4・大型チェーン以外の薬局は1/2へ、令和4年度と同率の補助率へ引き上げるように見直している。
電子処方箋には、重複投薬や併用禁忌薬剤を減らすことで薬剤費も減らせるなど医療費適正化のメリットがあるため、都道府県にも協力を要請して補助を増やしていると述べた。
電子処方箋の今後の機能拡充等
続いて、電子処方箋の今後の機能拡充等の予定を説明した。
◎機能拡充(2023年度冬開始)
・口頭同意による重複投薬チェック結果の取得 ・リフィル処方箋への対応 ・マイナカードを活用した電子署名
◎範囲拡大(2023年度末開始予定)
・医療扶助の電子処方箋対応 ・電子処方箋におけるオンライン資格確認用Webサービスの活用
◎新サービス(2024年度開始予定)
・調剤済み処方箋の保存サービス
◎整備(2023年度実施)
・電子処方箋の用法コード ・用法マスタの改善
今後のDXについて
厚生労働省は、オンライン資格確認・マイナ保険証により「全国医療情報プラットフォーム」の構築を目指している。 現在のオンライン資格確認のネットワークは保険診療を行う医療機関や薬局が対象だが自治体や介護事業所 も加えて、患者自身による同意の元、情報を共有しながらチーム医療を行うことを最終的な姿としている。
こうした基盤の構築によって救急・医療・介護現場の切れ目ない情報共有、医療機関・自治体サービスの効率化・負担軽減、医学・産業の振興に役立てるなどのメリットが生じると述べた。
現場の役に立つ医療DXを目指して
桒田氏は講演の最後に「私見」として、医療DXを推進していくための課題と今後の方向性について解説した。
◎マイナ保険証のメリットを最大化させる電子処方箋(短期)
電子処方箋には薬剤情報がリアルタイムで登録されるというメリットがあり、過去の情報を使って質の高い医療の提供につなげることが可能であることから、重複投薬や併用禁忌以外にもポリファーマシー対策への活用も目指しながら、リフィル処方箋や院内処方など現在対応できていない部分にも拡大していく。
◎患者情報の更なる活用に向けた取組(中期)
情報プラットフォームの構築によって、患者の病歴や服薬歴、健診歴など多くの情報が提供可能となるが、単なる情報の羅列では現場の判断に活かせないという声がある。そこで情報を整理して判断しやすく、現場でも役立てる形にして届けたいと語った。さらに、マイナポータルを通して患者自身への情報提供も検討しており、健康づくりに有効な内容の検討が今後の課題であるとした。
◎中⾧期的な医療需要への対応(中⾧期)
健康医療介護業界において担い手不足が深刻化している。医療DXは、医療サービス提供体制を効率化して
維持強化していくために役に立つという視点を持つことが必要で、情報プラットフォームの提供だけではなく、ソリューションの組合せが必要と述べた。
最後に、今後も医療現場の業務効率化や働き方改革、より良い医療の提供について考えていきたいと抱負を述べ、セミナーを締め括った。