セミナーレポートVol.11
服薬指導は薬剤師が組み立てよう!

セミナーレポートVol.11

服薬指導は薬剤師が組み立てよう!

本レポートでは、2023年5月25日に開催されたオンラインセミナー「服薬指導は薬剤師が組み立てよう!~服薬ケアコミュニケーションと服薬ケアステップ~」の講演内容をダイジェストでご紹介いたします。

  開催日時

 2023年5月25日(木)19:00-20:30

  演者

 一般社団法人 服薬ケア医療学会 理事長
 つくば薬剤師会 監事
 岡村 祐聡

  主催

 株式会社ユニケソフトウェアリサーチ
 ノアメディカルシステム株式会社

概要

セミナーの冒頭に、岡村先生から「多くの薬剤師がコミュニケーションの勉強をしても思うような服薬指導ができない、実力が伸びないとの悩みを抱えている」とご案内があり、そしてこれらの悩みを解決し、本当の意味でのかかりつけ薬剤師になるには、「服薬ケアコミュニケーション」のスキルを使いこなし、服薬指導を自らの意志で組み立てる能力が欠かせないとご提言がありました。今回のセミナーでは薬剤師が服薬指導を効果的に組み立てるための考え方や方法論について解説がなされました。

服薬ケアコミュニケーションとは

始めに服薬ケアコミュニケーションについて、一般的なコミュニケーションスキルだけでは不十分であると述べ、 患者の「心」を癒すことを目標とするものであると説明した。そして服薬ケアで一番大切なのは、「感情への着目」であると述べた。

一見何の問題もない患者でも感情に着目すれば悩みや不安を持っており、そのような気持ちを中心において患者の人生の中からプロブレムを抽出するのが服薬ケアのポイントであると示した。患者の人生の中にプロブレムを見出すためのキーワードとして、「感情への着目」のほかに、患者の「日常生活に意識を向ける」ことや、服薬行動に影響を与える「人間関係に意識を向ける」ことを挙げた。

薬剤師は患者へ説明することだけが仕事ではなく、患者が自宅できちんと薬を飲むところまで責任をもつ必要があると説明し、限られた時間の中での心のこもった服薬指導は、患者が自宅に帰ってからの行動にも影響を与えられると述べた。

さらに良好なコミュニケーションが成立するためには、具体的かつ表現を変えながら患者に確認してコミュニケーションギャップが生じないような工夫や、患者の薬識(薬に対する認識)は生活の中でゆらぐものであることを理解し、その日の薬識に合わせたケアを行うことなどがポイントであると説明した。

服薬ケアステップ

そして岡村氏は、服薬指導を自分で組み立てるための手法である「服薬ケアステップ」を紹介。服薬ケアステップを使いこなすには、今、自分がどのステップにいて、何を考え、何を聞き出そうとしているのかを明確にする意識が大切であると説明した。

そして、目的を意識せずに行き当たりばったりの服薬指導を行うと、指導内容が薄く説得力に欠けるため患者の記憶には何も残らないと示唆した。

服薬ケアステップは以下の7段階に分かれる。

1.質問のジャブ 2.気付き・掘り下げ 3.プロブレムの推定(絞り込み)
4.情報の追加と確認 5.プロブレムの確定  6.ケアの実施  7.効果の確認

中でもステップ2とステップ4が重要であるとし、最重要のステップ4について詳しく解説した。

情報の追加と確認

服薬指導の中で「あれっ?」と感じる気づきポイントを掘り下げていくのがステップ2である。ここでO情報(客観的な情報)を集めずに曖昧なアセスメントで服薬指導を進めると、的を外した服薬指導になってしまう。

ステップ2とステップ4のどちらに今自分がいるのか意識しながら、プロブレムに対してさらに必要な情報を質問して確認し、O情報を集めることが重要だ。そして「これだけの情報があれば説得力を持って患者に伝えられる」と思えるだけの情報を集めることで素晴らしい服薬指導になると説明した。

またO情報の考え方として、Problem Orientedを忘れないことが非常に重要であると示した。 POSは元々Problem Oriented Systemという名前からわかる通り、「ProblemOriented(プロブレ ム毎に)」考えることで、医療の質を上げて行こうという考え方。日々の服薬指導においてプロブレムを明確にし、それに対してどう判断したかをプロブレムごとに薬歴に記載する習慣をつけていかなければプロブレムを見つけるセンスや質問力が低下すると示唆した。

まとめ

医療の目的は患者のQOLの向上であり、私たち薬剤師は薬物治療の面で患者のQOLを高めることが 求められていると岡村氏は強調した。国の指針「対物から対人へ」を示しながら、薬の情報提供は対物業務であり、対人業務とは患者が抱える不安や問題を薬物治療の専門家として解決することと説明し、 正しく理解、行動するよう述べた。

そのためにも、服薬ケアコミュニケーションや服薬ケアステップを用いて患者の人生の中からプロブレムを抽出し、患者の心に届く服薬指導を行える薬剤師を目指すことが重要であるとしてセミナーを締めくくった。

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