セミナーレポートVol.10
今からでも間に合う! 食事指導で地域を支える薬局

セミナーレポートVol.10

今からでも間に合う! 食事指導で地域を支える薬局

 本レポートでは、2023年3月16日に開催されたオンラインセミナー「今からでも間に合う!食事指導で地域を支える薬局」の講演内容などをご紹介いたします。

  セミナー開催日時

 2023年3月16日(水)19:00-20:15

  第1部

 薬局で食事指導を始めるメリットと課題
 株式会社フォーラル 専務取締役
 前川 和廣 先生(薬剤師)

  第2部

 身につけよう、栄養指導の基礎
 株式会社フォーラル 栄養統括シニアマネージャー
 小口 淳美 先生(管理栄養士)

  主催

 株式会社ユニケソフトウェアリサーチ
 ノアメディカルシステム株式会社

薬局における管理栄養士への役割に期待が高まっている

これからの薬局の機能として薬物療法とともに栄養サポートの役割が注目されている。現在の調剤報酬では薬局に管理栄養士がいる前提になっておらず、メタボリックシンドロームへの特定保健指導以外の管理栄養士業務に報酬はつかない。しかし2024年の介護報酬改定では居宅患者への栄養指導に加算がつく方向で議論が進んでおり、薬局の管理栄養士への期待は高まっている。

今回のセミナーでは、全社員のうち管理栄養士が38%を占め、薬局での栄養相談を長年にわたり積極的に実施している株式会社フォーラルの前川和廣先生と小口淳美先生が登壇し、栄養相談の課題や取り組み、そこで必要となる知識について解説がなされた。

管理栄養士の課題と取り組み

セミナーの第1部では前川氏から、管理栄養士が薬局栄養相談を行うにあたり生じた課題とその解決策がいくつか示された。まず挙げられるのが知識やスキルの問題である。管理栄養士が誤った栄養指導をすると、患者の健康に影響が出る恐れがある。そのためフォーラルでは勉強会を定期開催し、社内試験に合格した者だけが栄養相談ができる制度を整えた。

また同社の管理栄養士は医療事務の仕事も兼業している。医療事務が多忙になると、管理栄養士の職能を活かした業務の時間が確保できないという問題が浮上するが、この点は、栄養相談が会社としての重要な取り組みであることを薬剤師に周知して理解を得ることで、専門業務に時間を取りやすい風土を作っている。

また兼業体制のメリットとしては、管理栄養士も普段から薬剤師と一緒に働くため自然と薬の知識がつき栄養相談にも活かせることや、対人業務に力を入れやすいことなどが挙げられた。

管理栄養士と薬局の今後

前川氏は、医療費削減などの観点でも、国民全体で健康寿命を延伸する仕組みが必要であるとし、未病の促進を主な活動とする薬局管理栄養士のニーズが高まっていく可能性があると示唆した。

また今後薬価や調剤報酬のマイナス傾向などによって、薬局の収益が減少すると考えられる中、薬局管理栄養士における栄養指導の点数化によって薬局の新しい価値づくりと収益に繋がるとの見通しも述べた。

薬局での栄養指導に必要な基礎知識

セミナー第2部では小口氏が講演を行い、実際に同社で行なっている研修内容を紹介した。管理栄養士が薬局で栄養相談を行なう上では、医師の診療方針を把握すること、服用薬や合併症を考慮すること、限られた情報から患者の生活背景に合った提案を行って信頼関係を構築すること、適切な相談時間を意識することなどがポイントであると述べた。

具体的に必要な知識としては、必要エネルギー量、BMI、エネルギーや水分の出納、体重減少率の考え方などが挙げられた。ただし計算することだけが目的ではなく、そこから患者に合わせてアセスメントするスキルが重要であり、その例として体重減少率から低栄養状態のリスク判断や、BMIの理想値が年齢により異なることなどを示した。

また血糖値や血圧、肝機能、腎機能などの基本的な検査値の把握、身体所見から患者の状態を推測できる力なども求められる。さらに時計遺伝子“Bmal1”、食べる速さと体型の相関、睡眠時間と食欲に関係するホルモンの分泌などの知識があると、より視野の広い栄養相談が展開できると示した。 

フォーラルではこうした実績や経験を基に薬局で実践的な活動が出来る管理栄養士育成のための研修を開催しており、栄養相談の礎は教育であると強調した。

薬局の使命は地域の健康づくりへの貢献

終わりに前川氏は、薬剤師は薬だけを知っておけば良いという時代は終わり、今後は生活全般のケアができる人材が求められると述べた。管理栄養士と薬剤師がお互いの専門分野を共有して高めながら新しい価値を作り、地域の健康づくりに貢献していくことが薬局の使命であるという見通しを示し、セミナーを締めくくった。

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