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進行乳がん患者が運動から得るベネフィットは大きい

 進行した乳がんの患者であっても、定期的に運動することで疲労や疼痛が軽減され、心血管の状態が改善してQOL(生活の質)の向上につながることがポルト大学(ポルトガル)運動生理学教授のEduardo Oliveira氏らによる研究で明らかになった。この研究結果は進行乳がん第4回国際コンセンサス会議(ABC4、11月2~4日、ポルトガル・リスボン)で報告された。

 研究の対象は、運動習慣のない34~68歳の進行乳がん(局所進行乳がんまたは転移乳がん)の患者15人。このうち8人には治療に加えて12週間の運動プログラムに参加してもらい、残る7人には通常の治療のみを受けてもらった。運動プログラムの参加者は、有酸素運動とレジスタンス運動で構成された1時間のセッションに週2回参加した。プログラムの内容は個々の患者に合わせて計画された。

 その結果、心血管の状態の指標である最大酸素摂取量(VO2max)は、通常治療群の2.7%増加に対して運動プログラム群では12.3%増加した。また、最大酸素摂取量出現時のパワー(VO2maxパワー)も通常治療群の3.9%増加に対し、運動プログラム群では37.2%増加した。

 さらに質問票を用いた調査からは、疼痛の自己評価スコアも通常治療群で2.6ポイント低下したのに対し、運動プログラム群では21.4ポイント低下したことが分かったほか、疲労のスコアもそれぞれ2.2ポイント、14.4ポイントの低下が認められた。このほか、運動プログラム群では幸福感や日常生活で必要なタスクを行う能力などのスコアも改善した。

 なお、運動プログラム群に割り付けられた全ての女性が最後までプログラムを完遂できたという。このことから、Oliveira氏らは「今回の研究に参加した女性は有酸素運動とレジスタンス運動のいずれにも良好な忍容性を示した」としている。

 Oliveira氏によると、運動のベネフィットは既に確立されているが、進行乳がん患者への影響について検討した研究は少なかったという。同氏は「進行乳がん患者は強い痛みや極度の疲労に苦しみ、当たり前の日常生活を送ることさえ厳しい。そのような状況では何の助けもなく運動プログラムを始めるのは難しいだろう」と指摘した上で、「今回の研究は小規模なものだが、今後この結果をより大規模な研究で検証する価値はある」と強調。多くの医療従事者に運動の効果について認識してもらいたいと呼び掛けている。

(HealthDay News 2017年11月2日)

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